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天狗の軍手

アニメとか漫画とかラノベとか色々と感想書いていきますん

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『新約とある魔術の禁書目録(13)』感想  






 ■新約とある魔術の禁書目録(13)

 学園都市に襲来した『魔神』の一人、僧正と上条当麻が接触する
 しかし、僧正が上条当麻に向けて差し出す提案は、上条当麻の意志と食い違うもので……!

『魔神』から逃亡する上条当麻は、ハイテク自転車『アクロバイク』で学園都市を疾走する。
 そんな彼の背中には、振り落されまいとしがみつく御坂美琴の姿があった。

 次々と迫り来る『魔神』に、超電磁砲(レールガン)で応戦する御坂美琴だが、軽く往なされてしまう。
 街を次々と破壊し、追い駆けてくる『魔神』に対抗するべく、意外な人物が救いの手を差し伸べられる

 そして。
『平凡な右手』が招く不条理な結末は……!
 






     1.

 上条当麻の下駄箱にラブレターが入っていた。
 上品なうぐいす色の雅な封筒。所々に花びらを模した飾りが施されている。
 上品な和紙で、光にかざせば透けてしまうほどに綺麗なもので、その和紙に細い筆で達筆な文字が色々と書かれている。

 その文章から、上条が読み取れた。
屋上で待ってます
 だった。

 達筆な文字を読んで、お嬢様学校の人だと上条は予想する。
 他の学校と合同で防犯のオリエンテーションが行われているため、他のお嬢様学校に通う生徒が、上条たちの通う学校に来ているとも考えることができる。

 難解な達筆ラブレターを解読して行き、末尾に書かれている名前と思わしき文字に目をつける。


  …………………………………………………………………………………………………………
……………………………………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………………………………。


「よお。手紙は読んでくれたかのう、上条当麻」

 木乃伊みたいな、老人がそこにはいた。

     2.

『魔神』僧正。
 目の前に立つ木乃伊が『魔神』だとわかった瞬間に上条は涙目になりながら叫ぶ。
「お前と一緒に幾千億の地獄を渡るのは無理!」
「まあ、ご褒美感はないからのう」
「もっぺん世界を敵に回して吹雪のデンマークを駆け巡るのとかもやだ!」
「やはり思春期の少年相手じゃとネフテュスか娘々(ニャンニャン)のほうが適任じゃったかのう
 心なしか、少し残念そうな僧正

『魔神』僧正が上条当麻に対して話すことは『グレムリンの正体についてだった。
 科学と魔術の混合集団ではなく
 北欧の魔神が率いる組織ではなく
 世界をどうにかしてしまい兼ねない『魔神』たちの協議会
 それが『グレムリン』。

 そして『魔神』たちは、この世界に興味はない。わざわざ上条当麻を求めてやってきたのは、『鞘』になってほしかったからである。『魔神』という制御のできないを収める』になってほしかった。だから『魔神』は上条当麻に接触してきた。
 何をしても世界を歪めてしまう『魔神』たちの行動を採点する。
 この役割を上条に担ってほしい、と。
 その代償として、上条当麻には願掛け、神頼みが百パーセントで達成できるようになる。

 こんな条件を加えて。
 僧正は上条に手を差し伸べる。

「断る」

 僧正の願いを断った。
 最短でどんな人でも助けることができる。そんな力を、蹴った。

 そんなのは、衣食住が揃っているから独房は幸せだと迫っているのと変わりない。
 上条は否定する。
 しかし、僧正はそんな否定を想定していたようだった。

「じゃがどっちみち結末は変わらんよ。これは早いか遅いかの違いでしかない

 僧正のそんな言葉と同時に僧正の後方に巨大な手が生えてきて、上条のいる学校を半壊させた。
 オリエンテーションの都合上、散り散りになっていたこともあって負傷者はいないようだが、もう半分を攻撃されては同じことだ。
 僧正に対して攻撃を加えて、一緒に屋上から飛び降りた。
 幸い街路樹があったおかげで大した怪我にはならなかった上条は、僧正から逃げる。
 安全な場所に移動して、僧正を対処しなければならない。

 マウンテンバイクを模した『アクロバイク』に跨って、逃亡を図る上条の視界に映り込んだのは御坂美琴だった。

 オリエンテーションによって、上条の通う学校にやってきていた美琴と遭遇した。
 上条は美琴を後ろに乗せて学校から飛び出して行った。

     3.

 地面から生えている巨大な手によって街が破壊される。
『警備員(アンチスキル)』や無人攻撃ヘリが僧正に向かって攻撃を繰り出す。しかし、次々と往なしていく僧正。
 時速六十キロで走る上条の手に握られているロープとワイヤーを、地面に倒れてもなお回転し続けているヘリコプターのローターに咬ませて高速回転を、僧正にお見舞いする。倒れているヘリということもあって、僧正の身体はアスファルトに幾度も叩きつけられる。
 それでも死ぬような様子はなく、上条の追跡を続行する。

 僧正に向けて超電磁砲(レールガン)を放つ美琴だが、『代名詞』とも言われる超電磁砲を木乃伊の腕で軽く往なす

 更に僧正の生み出した泥の巨大な腕が二十階建てのビルを掴んで振り下ろす。
 しかし、振り下ろされた二十階建てのビルは崩壊しなかった。美琴の能力によって破壊を免れた。
 更に砂鉄を使って泥の腕を切断したが、ものともしない僧正。

『まったく、仕方のない野郎だ

 真っ赤な紙の紙飛行機が、アクロバイクに並走してきた。
 霊装の主は、『神の右席』の一人、右方のフィアンマ。
『魔神』に対抗する手段として、『妖精化の術式があるこれを使う
 だから第五学区まで誘導しろ、と。

 一定の距離は保っているものの、いつ落ち着かれてもおかしくない距離。
 第五学区まで残り二キロ。直線状のこの道を何とか進む方法として、美琴が考えた方法があった。
 僧正が腕を作る際、辺りに砂鉄を混ぜておいて操る。
 生み出された腕と腕。手と手が合わさるように。

 だが、時間稼ぎに過ぎない。
 そんなの、すぐに引き剥がすことができる。

 磁力で引っ付けられた両手を離した瞬間だった。
 烈風が吹き荒れた。

 真空タンクを用いた風洞実験の応用

 マッハの速度を叩き出したアクロバイクは高速で第五学区に突入する。
 高速で第五学区までやってきた上条当麻と御坂美琴は、右方のフィアンマと交差した

 そして。
 僧正に向けて、『妖精化の術式は打ち込まれる
 爆音が響いた。

 後方を向いた上条の視界に映り込んだのは、宙を高速回転する隻腕の男だった。
『妖精化』の術式でも、僧正を止めることができなかった。

     4.

 目指すは第二十三学区。
 航空宇宙関連の施設が集まっている。ここなら人的被害は少ないはずだ。
 戦うならここが最も適切だ。

 僧正が薙いだ泥の腕は、ミキサー車に激突する。
 生コンクリートが溢れ出て来て、それを全身で浴びる僧正。更に加えて、消火栓を蹴り飛ばして放水が始まる。全身の生コンクリートが洗い落とされていくところに、美琴が『雷撃の槍』を放つ。十億ボルトの電気を浴びた僧正は、
「うーほほーい☆」
 行き当たりばったりの技だったが、会心の出来だったはずだ。
 聖人や、『神の右席』、雷神トール、マリアン=スリンゲナイヤーでも顔色を変えかねない会心の攻撃
 それを僧正は笑って、耐えて、追ってくる。

 逃亡最中に、アクロバイクのハンドルを切った。
 その先にあったのは、工事現場。二十五メートルプールほどの広さの穴で、地下四階の位置まで落下する。

 底に着地後、アクロバイクを漕ぎながら上条は不思議に思う。
「僧正が……追って来ない?」
 そう思って、アクロバイクを停車させた瞬間、岩盤を破壊して僧正が襲いかかってきた。
 ここで上条が疑問に思う。
 どうしてさっきは追って来なかったのに、突然追ってきたのだ?
 それに、最初、学校で出会ったときもどうして上条の居場所がわかった?

 地下から脱出したある考えを持って上条は、川を下っている作業船に飛び込んだ。

』。
 僧正は『土』を使う。
 巨大な腕は泥と土で生成されている。僧正が上条の動向を探知したとき、必ず上条は地面に足をつけていた。地に足がついていた。恐らく僧正にとって地面は自分の肌みたいなものなのだろう。

 だから船の上なら安全だ。
 探知される心配はない。だが、気づかれるのは時間の問題だろう。

(だけど)
 上条は思う。僧正という恐るべき相手に対して。
お前は怖くない。オティヌスのときとは全然違う。自分自身の存在を丸ごと引き剥がされるような、あの狂気をお前からは感じられない)

 今後の方針について相談しようと美琴は上条に声をかける。
「これから具体的にどうするのか話し合いま……」
 直後の出来事だった。

 上条は。
 褐色肌を包帯だけで隠している妖艶な女性と、血色の悪いチャイナ少女に寄り添われていた。

 ネフテュスという『魔神』と。
 娘々(ニャンニャン)という『魔神』だった。

     5.

「な、に、を、してんのあんたは――っ!?」

 怒声を上げた美琴の胸に娘々は袖から飛び出した分厚い刃物が突き刺さった。厳密には指先を変化させているわけだが、娘々の衣装からでは指先を窺い知ることはできない。
 それだけではない大量の刃が美琴の身体を貫いて抉って引き裂いた――ように感じた。
 痛みも出血もない

 咄嗟に上条は美琴の身体に突き刺さった刃をすべて右手で破壊する。
 美琴は困惑しながら、外傷のない自分の身体を擦る。
 やはり外傷はない。

 ネフテュスと娘々。
 二人の目的は僧正と一致していて、上条を採点者に据えることだが。それは本題であって今の目的ではない。厳密には上条に接触してきた目的ではない。
 二人の目的は僧正を止めることだった。
 暴走している僧正を止めてほしい。頭に血が上れば五秒前のことだって忘れてご破算させかねない。だから、止めて欲しい
『魔神』であるネフテュスや娘々が手を加えると、『魔神』同士の戦争になってしまう。
 だから上条当麻に『魔神』二人は頼み込みにやってきた。
 そのために、僧正についての情報を可能な限り提供する。
 僧正について話しましょう。

     6.

 僧正は仏教由来の『魔神』。
 インドで発祥し、中国や韓国を経由して持ち込まれ、日本独自の仏教に由来する魔神』。

 そもそも日本の仏教じゃ、どれほど修行を積もうとも一代だ悟りを開いて浄土に旅立つことはできない
 幾度も生まれ変わりを繰り返して、その都度厳しい修行を重ね、少しずつ魂を研磨することで仏様になる。
 これが本来の道だが、たった一代で、数十年という僅かな時間で仏になる方法がある。
即身仏』。
『即』より『身』が『仏』となる。

 僧正はこの儀式を得て、『魔神』になった。
『即身仏』がどのようなものなのか。僧正を見れば明らかである。
 木乃伊。
 血抜きも、内臓の取り出しもせず、ただ暗室で干からびるのを待つ。
 エジプトなどの木乃伊とはまた違う、日本式の木乃伊。

 即身仏。
 高僧が自らの意志で狭い地下室に潜る。空気の通り道を除き唯一の出入口を完全に埋める。高僧は最期まで禅を組み、小さな鈴を鳴らしながら読経を続ける。
 僧正はそうして生まれた『魔神』。
 僧正が『土』と関連付けられている所以である。
 そこまでして、僧正は何をしたかったのか。

 簡単である。
 衆生の救済
 世界を救おうとした。

『即身仏』を行えば誰でも仏になれるわけではない
 儀式を得て数週間から数ヶ月後、内部の高僧が完全に息を引き取ったとき、周りの僧たちは再び地下の出入口を掘り返す。そして、干上がった高僧の遺体を検分する。姿勢や、表情に僅かでも飢えの苦しみや死の恐怖が浮かんでいないか。少しでも崩れて腐敗した場所はないか。
 完璧を持って、高層は晴れて即身仏として認められる

 だが。
 認められなかったものはどうなるか。
 答えは簡単で、ただの腐敗した死体として扱われる。

 結局、高層がどれほど悟りを開こうとも、どれだけ即身仏を成功させようとも。
 成功したか否かを判断するのは掘り起こした者たちである。
 掘り起こした有象無象が認めることによって、即身仏は初めて完成する
 賄賂や、横行によって認められないなんてことがあってもおかしくない。
 即身仏にさせないなんて動きがあってもおかしくない。

 もし、即身仏として完成しているのに
 認められなかった高僧がいたらどうなるか

 即身仏を得て、仏としての力を得ておきながら仏になることができなかった高僧は一体どうなってしまうのか

 とある高僧は本気で衆生を救いたいと願った。
 だが、それには人の身では足りない。仏になる必要がある。
 そう信じていた。だから彼は、今ある立場や財産をすべて放棄して、土を掘って狭い地下室に躊躇なく潜っていき、必要なことをすべて行った。彼は決められた手順をすべて完璧に消化し、輪廻の連なりを無視して、一代にして仏へ上り詰めた。

 だが。
 有象無象が、それを認めなかった。
 派閥争いによって、認めらなかった高僧の遺体は、未熟者として切り離された一角に埋められる。

 だが。
 どこの誰が認めなかったとしても、既にその高僧は必要な手順をすべて終えて、仏となっている。
 仏として認められなかった高僧は、なった。
 迷い仏に。
 
 仏として認めさせない動きがあった証拠として、僧正の姿には特徴が残っている。黄金の装飾品。純金でできた剣を携えている。
 即身仏を成功させないために、金銀財宝で彩って、こんな金銀財宝で彩られている奴が、悟りを開けるわけがない。
 そういうことにしてしまえ。

 僧正は、自分が受けた仕打ちを皆が望んだことと結論づけて、押しつけられた役割のない仏が世界の救済に繋がるのだと信じている。朽ち果てながらにして、今に満足している僧正に言葉は通じない。

 そうして生まれた僧正。
 仏の座を与えられなかった高僧は、新たな『魔神』になった。

     7.

 学園都市第二十三学区。航空宇宙開発に特化された学区である。
 船から降り、地に足をつけた上条当麻の反応を追って僧正はやってきた。

 僧正は、地中にある土や泥を使って巨大な腕を作った。

「あんたは色々やり過ぎた。今まで誰もできなかったことを言ってやる。当たり前のつけを当たり前に払いやがれ!」

 直後。
 巨大な腕に変化が生じた。
 土や泥を練って作られた腕は、熱処理や化学反応などの一度加工されたものは除外される。その証拠にビルを『操る』のではなく『掴んで』振り回した。そして、その腕にどんな遺物が混ざっているのかまでは検知できない。前に砂鉄を混ぜることで実証していることだ。

 辺りに液体酸素や水素を含んだボンベを転がしておいた。
 高圧ボンベを規則的に配置して、膨大な圧力を集める
 地球の中心核の温度は六千度。膨大な圧力をかけて物体を縮めるとそれだけで凄い熱を持つようになる

 これを再現すればどうなるか。
 圧力がかかった土の腕は、崩れ落ちたかと思うと内側から橙に輝く液体が滝のように木乃伊に降り注いできた。

 実際問題、高温でマグマ化したのはほんの一部だろう。しかし、そのマグマが周囲の土や泥を溶解させ、更にマグマを生成していく。
 僧正は、マグマがした腕をどうこうすることはできない。

随分とつまらないことばかりしてくれるのう?』

 僧正は、マグマを浴びながら言う。
『儂は今かまだかと幻想殺し一つで立ち向かってくるお主をずっとずっと期待しておったというのに! 学園都市の仲を走り回る? 儂を見たら即座に逃げ出す? つまらん。ああつまらん! 一番らしかったのは最初の屋上からダイブする潔さだけだったではないか! あの小娘が出てきてからは一つも面白くない! お主は守るものを意識し過ぎるあまり、その尖った個性を放棄しておる。弱って、くたびれて、見る影もない。成長とでも勘違いしておるのかえ? お主が見舞われておるのはな、もはや老いという言葉のほうが似合う
 この言葉を美琴も聞いていた。
『もしもあの小娘の所為で右手が使えないというのなら、それは立派な害悪であろう。もしもあの小娘の所為でその幻想をぶち殺すと言えないのであれば、もはや足を引っ張っているだけであろう

 だからさっさと言っちまえよ

『御坂、俺の後ろに下がっていろ。ちょろちょろしていると邪魔だから余計なことをしないで隅っこで丸まっていろ、と』

 美琴には。
 この言葉に対して否定の言葉を見つけることができなかった。
 上条当麻の行動がらしくないことを、わかっていた。

(私、お荷物にしかなってない!)
 少女のアイデンティティが鈍い音を発てそうな状況だった。

「……、んなよ」
 少年は言う。

「ふざけてんのか僧正。赤の他人が、知ったような口で俺を語るんじゃねえよ! そばにいたのが御坂だったから、ここまでやってこられたんだ。てめえは一体何様なんだ!」
『痩せ我慢はよせよ上条当麻。正直、あれに合わせて会話をするのは苛々していたじゃろう?』
「その考えが、もう間違ってんだ」
 上条当麻は。

取り消せ

 言う。
「これ以上俺の命の恩人を悪く言うってんならお望み通りぶん殴ってやる! てめえが溶岩塗れだろうと知ったことか! 幻想殺しが通じるかなんてどうでもいい! この拳が焼け落ちて全身火達磨になったって構わねえ。その薄汚ねえ口を今すぐ閉じねえなら、閉じるまで何度でもてめえをぶっ飛ばすっ!」

「なに頭に血を上らせてんのよ、この馬鹿! 私たちの勝敗は、相手を倒すかどうかじゃない。無事に今日という一日を乗り越えることよ!」

 溶岩を引き摺って迫り来る僧正に向けて、大量の瓦礫を叩き込んで、美琴は降ってくる。
 一緒に降ってきたアクロバイクのハンドルを掴んで真後ろに移動して距離を稼ぐ。

『くだらんくだらんくだらんくだらんっ! 折角、何かの風向きが変わりかけていたというのに、あの小娘がっ! 幻想殺しは! 右の拳は! 神浄の討魔はどこ行ったああああああああああああああああああああああああああああ――っ!』
 直後の出来事だった。
 静電気のようなものが散った。
 円筒状の巨大な空間、その壁一面が青白い輝きを放つ。重力を無視して細かい瓦礫が宙に浮かんでいく。
『お、おおおおお!? ま、まさかこれは――』

 地下サイロ式マスドラバー。
 莫大なプラズマ流は指向性を伴い、雲をぶち抜き、中心から吹き散らして、一筋の光が惑星から飛び出した。

『土』を使われるならば、使われないように『土』のない場所に移動させればいい。
 僧正を地球から追放した

     8.

『うほほーい☆』
 地球外に追放された僧正は、地球に接近していたアローヘッド彗星を操って近づかせる。
 アローヘッド彗星に乗って、地球への帰還を目指す。
『さあ来い幻想殺し、いいや神浄の討魔よ! 掛け値なしに右手へすべてを預けるお主の決断の力を見せてみよ!』


「……、」
 迫り来る、アローヘッド彗星に向かって上条は右手をかざす。
『ぴしり』『ぴしり』と何か亀裂の走るような音が断続的に続く。
 正確には、少年の右腕辺りから。


対魔術式駆動鎧(アンチアートアタッチメント)、セットアップ』
 それはまさしく一瞬の出来事だった。
『ほっ』
 巨大な凶星と化した僧正のど真ん中をタングステン鋼の長大なドリルが一撃で貫く。
アレイスターからの伝言だ
 全身に装甲を纏うゴールデンレトリバー、木原脳幹は言う。
『憶えているか。……世界をよりよくしたい、人類を余さず掬ってみたい。そんな幼稚な歯車ですりつぶされるようにして運命論に命を奪われた、私の娘の名を』

 僧正は、微かな笑みを作った。
 そして、こう呟こうとした。

 すまなかったな、と。
 
『まずは一人。いいや、「ゾンビ」とやらを入れれば二人目か』
『よくやった』
 アレイスターからの通信があった。
 あのアレイスターが『魔神』撃破とはいえ、こうまでわかりやすく感情を表に出すものかと。
『これであらかたグレムリンとやらも片付いたな。始まってしまえば早いものだ』
『待て』
 木原脳幹は違和感を覚え、確認を取った。
『私が仕留めたのは僧正だ。ほかに、少なくともネフテュス、娘々がいたはずだが』
『何を言っている』
 アレイスターの声色から、再び感情が消失していく。
『では、あれはきみがやったのではないのか?』
『……、』
 何だ。
 ……あの街では一体何が起きている

     9.

 娘々がネフテュスいたと思われる場所に、一人の平凡な高校生男子が立っていた。
 上里翔流。
 さっきまでいた『魔神』に、その少年はそう名乗っていた。
 そして、少年の右手には理想送り(ワールドリジェクター)と名づけられている。

 幻想殺しは『世界の基準点や修復点』とされている。
 理想送りは『魔術を扱う者たちの願望の集積体』。

 今ある世界を修復する、直す、しがみつく理想。
 今ある世界を見捨てる、旅立つ、放り出す幻想。




 まさか『魔神』たちが一掃されるとは思っていなかった。
 僧正、ネフテュス、娘々の三人に一冊ずつ使うと思っていたら、まさか全員やられるとは……。

 理想送り。
 今のところ、具体的な能力はわからないけど、幻想殺しとは対になるような能力なのでしょう。
 上条さんの右手と、何か関連性があるのかな?

 漫画『とある科学の超電磁砲』の大覇聖祭で、上条さんの腕から八体の竜が出てきていましたし……。
 その兆候が、アローヘッド彗星に対してあったのかな……?

 僧正の言うように。
 上条さんの傍らにいたのがインデックスやオティヌスなら、また違う戦いになっていたんでしょう。一応は魔術で生成された腕ですから右手が通用するはずですし。

 新約四巻の後半で登場して、新約五巻か新約六巻で何か活躍するかと思えばそんなことはなかったフィアンマ。
 そんな彼の久々の登場でしたが、一瞬でやられてしまった。
 そりゃ、あれだけフラグをおっ立てりゃあなあ……。

 僧正や娘々などの『魔神』たちが、結構好きなキャラクターでした。
 クレーンゲームを真剣にやったり、ネットカフェに行ったり、上条さんに宛てて丁寧にラブレターを書いたり。


 本当の『グレムリン』編が開始するかと思った矢先、『グレムリン』編は終わった。
 多くの『魔神』が一掃されてしまい、謎の少年が出現。今後この少年がどんな風に絡んでくるのか。
 イギリス清教、最大主教ローラ=スチュアートも何か企んでいるみたいですし。

 今後の展開が更に楽しみなところです。

 



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