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『掟上今日子の備忘録』『第一話』感想
2014/10/21 Tue. 17:52 [edit]
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■掟上今日子の備忘録 第一話「初めまして、今日子さん」
「探偵を呼ばせてください!」
あらゆる事件に巻き込まれ、常に犯人として疑われてしまう隠館厄介。
彼が呼んだ忘却探偵、掟上今日子。
彼女はすべてを一日で忘れてしまうため、あらゆる事件をほぼ即日解決!
――首を傾げたときは、探偵を呼んで下さい。
――お忘れなく。
1.
探偵ものとしての特徴は、探偵が行く先々であらゆる事件に巻き込まれるということだ。
それらの事件は彼ら探偵が出向くから起きるのだと。
名探偵がいるから事件が絶えないのだと。
名探偵がいるから事件が生まれるのだと。
こんな意見が浮上して名探偵規制法。
通称、探偵取締法が制定されたのは約十五年前の話である。
探偵たちは『地獄』と呼ばれる『探偵都市』に収容される。
――というお話ではない。
とはいえ、探偵が事件を誘発させているかもしれないなんてことは冗談混じりに言われていることではある。
しかし、幾分探偵は事件をちゃんと解決するのだからまだいい。
仮に――事件を誘発させてしまうだけの一般人がいたとしたら、かなり性質が悪い。
隠館厄介は事件が起こる度にその都度、事件の『原因』――つまり犯人ではないかと疑われてしまう。
意味もなく疑われてしまう。
その性質もあって、仕事につく度に疑いの目を向けられクビになってきた隠館厄介はこの日、勤め先、更級研究所にて起きた事件で新入りだった彼は疑いの目を向けられてしまう。
貴重なデータのバックアップが入ったSDカードが室長の元から紛失した。
ただなくしただけだろうと、室内を捜索する研究員たちだが、どこにもそのSDカードが見当たらない。
そして隠館厄介はいつも通り疑いの目を向けられてしまった。
2.
よく疑いを向けられる隠館厄介はいざというときのために、探偵たちの連絡先を多く有している。
その中で、即日解決が可能な探偵。忘却探偵、掟上今日子さんへ連絡し駆けつけてもらった。
現場を調査し、関係者たちに一人ずつ質問をして話を聞いていく今日子さん。
しかし、SDカードは発見に至らなかった。
従業員たちの持つSDカードを一つ一つチェックしたが、バックアップとして保存されているデータはそのSDカードの中にはなかった。
いよいよ手詰まりかと思っていた中で今日子さんはSDカードの在処に検討をつけていた。
そのときのことだった。
今日子さんは突如として眠ってしまった。
3.
隠館厄介に起こされた今日子さんは――忘却していた。
一度眠ると、彼女は忘却してしまう。故に一日だけの忘却探偵。
これまでの事情聴取から手に入れていた情報をすべて忘却してしまい、更に現状まで忘却してしまっている今日子さんに隠館厄介は状況説明を行う。
仕事中にも関わらず今日子さんが眠ってしまったのは、薬が盛られていたからではないかとのことだった。
睡眠薬に限らず、風邪薬でも十分に効果はある。
今日子さんは一度眠ってしまうと、記憶を忘却してしまう。
それを知っている者による仕業だと。SDカードを盗んだ犯人による仕業だと。
4.
犯人は今日子さんの逆鱗に触れてしまった。
今日子さんはある種の『反則技』で犯人を炙り出して、SDカードを見つけた。
SDカードがあったのは研究員たちが所有する多量のSDカードのうちの一つだった。
ただ、さっき――記憶を失う前の今日子さんが既にすべてのSDカードをチェックしている。今の今日子さんが手に取ったSDカードはその時点で確かめたSDカードだった。
そのSDカードにデータが入っていなかった理由は簡単である。
何故ならば削除されていたからである。
正確にはSDカードに別のデータを書き込んでからバックアップのデータをデリートされた。
「……データ復元ソフトか」
一人が答えに辿り着いた。
SDカードは一人の研究員が持っていた。
表面上では消えたように見えつつも、実はデータは残っている。
完全にデータを削除することは困難。そこを――利用した。
5.
何だか所々で隠館厄介くんに疑いを向けるように作られているように感じました。
ミスディレクションなんでしょうけれども、探偵もの然り推理もの然り――盲点なのは語り部自身だったりするんですが、最近ではその手法も随分と使われ、始めから主人公に対して疑ってかかるユーザーさんも多くなっている(らしい。少なくとも僕はそう。特に西尾作品に対しては)。
途中まで『こいつ犯人だぞ』と思合わせておいて、実は違う! というミステリの基本がなされていた。
最初は隠館厄介を疑っていましたが、途中から露骨に怪しいと思わせる扱いが見受けられたので流石に違うとは気づきましたけど。
6.
この第一話のトリックは新しい!
どこぞの英雄風に言うと、
「げっげっげっげっげっげっげっげっげっげ! あ! 新しいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
です。
パソコンやスマートフォンなどのデジタル機器が普及したからこその盲点を突いたトリックだったのではないでしょうか。
僕個人は『西尾作品の短編は安定して面白い』と思っていまして、短編の場合ですと引き延ばすようなことはなく必要最低限のことしか書かれていないで、適度に楽しめる。
短編でめちゃくちゃ面白い! というのは『りすか』などですが、西尾先生の短編はどれでも安定した面白さがあるように僕は思っています。
7.
西尾作品に共通して言えるのは、登場人物が常軌を逸しているか、世界観が常軌を逸しているか――なんですが。この作品はそのどちらにも属さないような、極めて落ち着いた作品だったと僕は思いました。
最近刊行された『伝説シリーズ』や『物語シリーズ』とは随分と違った雰囲気の作品でした。
作風(?)は『世界シリーズ』の『ぼくの世界』と似ているんですが、雰囲気は『難民探偵』寄りでした。
登場人物たちが大人だからなのかな?
ともあれ、『掟上今日子の備忘録』『第二話』に続きます。
あ、裏表紙(っていうんですか? 表紙を捲ったところにある表紙)のデザインが格好いい。
category: 読書感想
tag: 西尾維新 掟上今日子の備忘録 忘却探偵シリーズコメント
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